今話題の映画「永遠の0」を観てきました。すばらしい映画でしたよ。
映画の人気に伴い原作も売れているようで、「永遠の0」を読んだときは100万部を突破したぐらいでしたが、今は驚きの300万部超えだそうです。
戦争談義にありがちな右だとか左だとかの話は抜きにして、戦時中に生きた人々の人生や考え方、社会の様子、特攻、戦後の繁栄や政治について、永遠の0はいろいろと考えさせてくれる映画でした。
映画 永遠の0
新年あけましておめでとうございます。さて、正月は映画でも・・・ということで、今話題の映画「永遠の0」を観てきました。
原作の「永遠の0」は以前に読んでいて、その時は100万部を突破したぐらいでしたが、今は驚きの300万部超えだそうです。
さすが、百田尚樹さんは放送作家として人気番組「探偵! ナイトスクープ」を手掛けただけのことはありますね。小説家に転身しても、テレビで培ったエンターティナーの才を発揮してミリオンセラーを生み出しました。
でも、発表は2006年ですか。えぇぇ~永遠の0ってそんな昔の本だったのか・・・7年間も売れ続けてたなんて、今更ながらビックリですね。
永遠の0はフィクションですが、緻密な調査に裏付けられたリアリティのある内容と巧みな文章で、最後まで一気に読めました。主人公の宮部久蔵にまつわる人間ドラマも秀逸です。
それがたとえお涙頂戴の作り話であったとしても、永遠の0は小説というエンターテイメントだと考えると、やはりすばらしい出来栄えだと認めざるを得ません。
超一流のゼロ戦パイロットで、卑怯者と言われても「娘に会うまでは死なない」と、妻との約束を守り続けていた宮部久蔵は、なぜ特攻に志願して死んでいったのか?
終戦から60年目経ち、孫たちによって解き明かされる宮部久蔵と特攻で生き残った祖父・賢一郎との関係や、戦後に宮部久蔵の妻だった松乃と再婚に至るまでのエピソードが明らかになります。
姉の結婚にまつわる話や、新聞記者の話がカットされていて、原作の永遠の0とは多少異なる部分もありましたが、基本的には小説のストーリーをを忠実に再現しています。
永遠の0を観るきっかけ 百田尚樹さんのツイート
さて、どうして永遠の0を観たいと思ったのか・・・百田尚樹さんのこのツイートを見たのが大きな理由の1つです。
いよいよ明日、『永遠の0』が公開される。原作者の私の言葉など信憑性がないと思われるかもしれないし、また単なる宣伝と思われるかもしれないが、恐れずに言う。映画『永遠の0』は、本当に傑作!
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) December 20, 2013
あら~手前味噌だなぁと思ったのですが、このツイートは正しかったです。いやぁ、本当にすばらしい映画でした。永遠の0の上映終了後に、館内に拍手が起こったのもウソではないでしょう。
各地の映画館で、「永遠の0」の上映終了後に、館内に拍手が起こったというツイートが多数ある。それって、すごいことじゃないだろうか。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) December 21, 2013
原作版の永遠の0は以前に読んでるので、内容はだいたい予測がついてたにも関わらず、映画版の永遠の0を観てまた感動してしまいました。
涙腺の弱い方はハンカチ必須です。実際に泣いている人もたくさんいましたよ。
永遠の0 ゼロ戦や空母赤城もVFXでリアルに再現
この映画で一番気になったのは、戦闘シーンでのゼロ戦や空母の出来栄えです。兵器の描写がチャチだと一気に興ざめしてしまう所なのですが・・・いや、こちらもすばらしかった。
空母赤城はCGとは思えないほどリアルで、艦体もさることながら、飛行甲板や格納庫内部もきちんと作りこまれていていました。特にミッドウェー海戦で赤城が爆撃されたシーンは実写かと思うほどのリアリティがありました。
ゼロ戦も実物と同様の物を制作したそうです。かすれた塗装や沈頭鋲を使った機体外板もちゃんと再現されています。操縦席内部のディテールもぬかりなし。
空戦シーンは光の向きにまでこだわって制作されています。今のVFXってホントにすごいんですねぇ。
安倍首相の靖国参拝
あと、永遠の0を観たいと思った理由はもう一つあります。
安倍首相の靖国参拝をきっかけに、日本だけでなく世界からも様々な意見が出ています。そんな中で永遠の0が公開されたのを機に、国家や戦争について自分なりに考えてみたいと思ったのです。
安倍首相の靖国参拝に関しては、今やることじゃないだろって思います。
それは中韓の反発、国際的な批判、戦争賛美などといった理由ではありません。日本を守るために命を捧げた人々を邪険に扱いたいというわけでもありません。
でも、靖国に関しては日本の中だけで済む問題ではなくなりました。外野から言われることじゃないというのはもっともな意見ですが、現実はそうなっているから仕方ありません。
そんな中で、靖国問題を含めた戦後レジームからの脱却は本当に成立するのか、周辺諸国と折り合いはつけられるのか、その勝算についてきちんと裏付けはあるのか、そこに個人的な感情や意見を交えず、日本の現状を分析した上での予測が語られているとは思えないのです。
昭和16年夏の敗戦
「昭和16年夏の敗戦」という本があります。日米開戦直前に若手エリートを集めた総力戦研究所が、日米もし戦わばという想定でシミュレーションを行いました。
組織のしがらみや場の空気といった実体のないものを排除し、国際情勢や石油の備蓄量、資源などの現実に即したデータを基に分析した結果は、実際の戦争の経過とほぼ同じだったそうです。
そして日本必敗という報告は握りつぶされ、何の対処もないまま戦争に突入していきました。日本は負けるべくして負けたのですね。
著者は今話題(?)の猪瀬直樹です。この頃の猪瀬さんはいい仕事してたんですねぇ・・・
海上護衛戦
あと、「海上護衛戦」という本もあります。
帝国海軍海上護衛総司令部の作戦参謀だった大井篤さんが、戦中のシーレーン防衛の実態について語っています。戦争はいくら精強な兵隊や優れた兵器があっても、補給や兵站がなければ続けることはできません。
開戦後に輸送船やタンカーが次々と沈められていく中でも、帝国海軍は海上護衛を軽視し、最後には戦艦大和の水上特攻作戦のために、海上護衛総隊の貴重な燃料を横取りされてしまうのです。
戦争末期の絶望的な状況でも、シーレーンの確保より帝国海軍の意地やプライドが優先されてしまうのですね。
こういった本の中にも、永遠の0のような話があり、宮部久蔵のような人々がたくさんいたはずです。そして、その人々は無謀な特攻や作戦で死んでいったのです。
映画の中でも宮部久蔵を知る人たちが戦争体験を語っていましたよね。いわしは国家論や精神論よりも、現場にいた人々の声にこそ耳を傾けるべきだと思います。
こんな時にこそ右や左のバイアスをかけない戦争体験者への聞き取りはできないものでしょうか。
零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争
先日、ノンフィクション本の書評サイト「HONZ」で、「零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」という本が紹介されていました。
その中で、こんな記述がありました。
時間というものは無慈悲なまでに流れゆく。かつて、大空を翔けて戦い、戦場を生き延びた若き戦闘機乗りたちも今は次々に鬼籍に入っている。あの戦争は急速に血の通わぬ歴史の記述へと変わりゆく。これほどの大勢の零戦乗りに大規模なインタビューを行えるのは最後かもしれないのだ。あの戦争を等身大に自分の事として語れる人たちの話に是非とも耳を傾けて欲しい。それは、大空の戦場を、命を賭して駆け巡った若者たちの青春の物語であり、誇りと人命と技量と技術とがせめぎ合う葛藤に満ちた男たちの物語である。
ホントにその通りだと思います。終戦から70年経ち、当時のゼロ戦乗りもおそらく90歳を超えているはずです。本物の戦争経験者に話を聞ける時間は、あとわずかしか残っていません。
靖国問題なんかは実態のない「英霊」に語らせるようなことをせずに、本当の戦争経験者に話をしてもらえばよいと思います。
国家の誇りやプライドより大切なもの
国家の誇りやプライドは大切だけど、その裏付けはもっと大切だと思います。
自分も日本人ですから、日本が大好きです。心の中には、安倍首相を応援したいという気持ちがあります。欧米諸国だって昔の行状を考えると、日本にだけエラそうな口は叩けません。
でも、国際社会で正義や真実を語るための代償はあまりにも高すぎる。日本は敗戦国になり、そのことを十二分に学んだのではないでしょうか。
いつも犠牲になるのは、宮部久蔵やその家族、仲間たちのような普通の人々です。
安倍首相には一国を預かる首相として、感情にとらわれることなく、淡々と日本の現状を分析した上で勝算や落とし所を語ってほしいと思います。いま挙げた話は極端かもしれませんが、永遠の0を見ながら、そんなことを考えてしまいました。
戦争談義にありがちな右だとか左だとかの話は抜きにして、戦時中に生きた人々の人生や考え方、社会の様子、特攻、戦後の繁栄や政治について、永遠の0はいろいろと考えさせてくれる映画でした。
あと、宮部久蔵役の岡田准一くんはなかなかの役者ですね。男から見てもかっこいいと思います。永遠の0に続いて軍師官兵衛の主演と、今年は役柄も当たり年です。
佐伯健太郎役の三浦春馬くんも演技は特別上手だとは思いませんでしたが、逆にそれが今時の若者という感じでよかったです。
ところで、永遠の0のことを「戦争賛美」だとか「零戦と特攻のエンターテイメント化」と評している人がいますけど、これのどこが「戦争賛美」の映画なんでしょうか。よくわからん・・・まあ、これも一つの見方なんでしょうか。
井筒監督、映画『永遠の0』を強烈批判。「観た記憶をゼロにしたい」という記事がありますね。プロパガンダ映画ならともかく、ただのエンターテイメントなんだから別にいいじゃね~かと思いますけど・・・
『宮崎駿「永遠の0」を嘘八百と批判!? 百田尚樹も「おこ」で零戦戦争勃発か』なんて記事もありました。戦争を題材にした映画を制作すると、どうしても戦争の可否みたいな話になっちゃいますね。
とにかく、永遠の0はホントにいい映画でした。おすすめです!